加算額

国民年金の老齢基礎年金には、受給権を取得した当時生計を維持していた妻や子があっても、年金額の加算はありませんでした。(振替加算は除く)しかし、厚生年金では一定の要件を満たす妻や子があるときに、老齢厚生年金への加算(加給年金額)が行われます。その加給年金額の全部または一部が、妻が65歳になって老齢基礎年金を受給するさいに、夫から付け替えられて振替加算となります。

また、60歳前半から支給される老齢厚生年金の定額部分と老齢基礎年金とを比較した場合、老齢基礎年金のほうが低額となるので、経過的に定額部分と老齢基礎年金との差を埋める経過的加算というしくみについても紹介します。

加給年金額

被保険者期間の月数が240(中高齢者の期間短縮措置に該当するときは、その期間(詳しくは受給資格期間の短縮を参照))以上である老齢厚生年金の年金額は、受給権を取得した当時、受給権者に生計を維持していた次にあげる配偶者や子があるときは、加給年金額が加算されます。

  1. 65歳未満の配偶者(大正15年4月1日以前生まれの配偶者は年齢制限がありません。)
  2. 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子
  3. 障害等級1級または2級に該当する20歳未満の子

配偶者は事実婚の配偶者も該当しますが、子は法律上の子(実子および養子)でなければ該当しません。

対 象 者加給年金額
配 偶 者231,400円×改定率
1人目・2人目の子(1人につき)231,400円×改定率
3人目以降(1人につき)77,100円×改定率

改定率は毎年度変わります。

さらに、昭和9年4月2日以後に生まれた受給権者は、その受給権者の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に特別加算が行われます。

厚生年金保険法附則昭和60年5月1日法律第34号
受給権者の生年月日特別加算額
昭和9年4月2日~昭和15年4月1日33,200円×改定率
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日66,300円×改定率
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日99,500円×改定率
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日132,600円×改定率
昭和18年4月2日以後165,800円×改定率

加給年金額と振替加算の関係

国民年金の振替加算という制度と厚生年金保険の加給年金の関係は次のようになります。

振替加算は必ずしも夫から妻へ行われるものではなく、その逆もあり得ます。ただし、ここでは一般的な事例で説明します。

加給年金額と振替加算

国民年金の振替加算では、妻の要件として大正15年4月2日から昭和41年4月1日まで生まれの妻で、次のいずれかに該当する場合に、妻の老齢基礎年金へ加給年金額が振替加算されます。

  • 妻が65歳になったとき、次の1または2のいずれかに該当する夫によって生計維持していて、かつ、65歳になる日の前日(誕生日の前々日)に夫の加給年金額の支給要件を満たしていたこと
    1. 被用者年金各法(厚生年金、共済年金、私学共済等)の被保険者、組合員、加入者期間が240月()以上である老齢厚生年金、退職共済年金の受給権者
    2. 障害厚生年金または障害共済年金の受給権者(同一の支給事由で障害基礎年金の受給権を有するものに限る)
  • 65歳に達した日以後に夫が前項の1または2のいずれかに該当するに至り、かつ夫によって生計を維持されていること

大正15年4月1日以前に生まれた妻は、新法施行日の昭和60年4月1日には既に60歳以上となっていたため、新法の老齢基礎年金を受給することができませんから振替加算は行われず、引き続き夫の老齢厚生年金に加給年金額が加算されます。

加給年金額の支給停止

  1. 老齢厚生年金と障害基礎年金が併給されているとき、障害基礎年金の加算額の対象となる「子」がいる場合は同時に老齢厚生年金の加算額の対象となります(つまり、老齢厚生年金と障害基礎年金の加算額の対象となる「子」は同条件)が、障害基礎年金の加算額を支給し、老齢厚生年金の加給年金額は支給停止となります。ただし、障害基礎年金の「子」に対する加算額が全額支給停止されているとき(たとえば、19歳の障害2級の子が障害3級になったとき)は、老齢厚生年金の加給年金額が支給されます。
  2. 加給年金額の対象となっている妻が、被保険者期間240月(中高齢期間短縮措置に該当すれば、その期間)以上である老齢厚生年金障害厚生年金障害基礎年金、あるいは共済年金(私学共済も)の老齢、退職、障害を支給事由とする年金給付を受けることができる場合は、その間加給年金額の支給は停止されます。

得か損かの分かれ道

厚生年金保険は高齢任意加入被保険者は別として、70歳まで被保険者でいることができます。つまり、夫が老齢厚生年金を受給し始めたときに共働きの妻の厚生年金被保険者期間が240月なくても、妻への振替加算が始まる65歳時に240月以上になっていれば振替加算は行われません。

妻の老齢厚生年金額と振替加算の額とを見比べて、240月未満になるよう勤務の期間を調整して退職するのが得かどうか考える価値はあると思います。

もう1つ注意したいのが、平成19年4月から運用が始まった「合意分割制度」です。加給年金の支給条件である夫の受給権取得時に妻の厚生年金被保険者期間240月未満が満たされていても、合意分割によって妻の被保険者期間が増えることによって、振替加算は支給されなくなります。(詳しくは合意分割をご覧ください。)

経過的加算

経過的加算

法改正により、一般男子は昭和36年4月2日以後生まれ、一般女子は昭和41年4月2日以後生まれの人は、老齢厚生年金の支給開始年齢は65歳からとなりました。ところが、それより前に生まれた人については、一気に60歳支給から65歳支給へと変更せず、段階的に支給開始年齢を遅らせる手段がとられました。(詳しくは65歳未満の老齢厚生年金の開始年齢をご覧ください。)

そして、65歳未満で支給される従来の老齢厚生年金の定額部分と65歳から支給される老齢基礎年金との金額差があるので、その穴埋めに厚生年金保険から差額を支給するしくみが経過的加算です。

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