標準報酬

国民年金の保険料は定額保険料でしたが、厚生年金保険は毎月の給与(これを厚生年金保険では報酬月額といいます)およびボーナス(賞与)に応じた保険料を納付することになっています。しかし、給与明細を元に計算してみると、報酬月額が若干変動しているのに引かれている保険料は変わらない、といったことはありませんか?

ここでは、厚生年金保険料の基礎となる標準報酬、標準賞与というしくみを紹介します。

標準報酬月額と標準賞与額

平成15年4月から「総報酬制」という制度が導入されました。それまでは、報酬月額と賞与とでは保険料率が違い、賞与に関しては特別保険料として1%が徴収され、かつ給付には反映されませんでした。そこで、賞与にも報酬月額と同様の保険料率を適用し、給付にも反映することとしたのが「総報酬制」なのです。

厚生年金保険(健康保険も)は保険料を決定する元になっているのは報酬月額ですが、そのままの金額を用いて保険料を計算しているわけではありません。役所の都合(だと思います)で報酬月額を簡素化した金額に置き換えた「標準報酬月額」という金額を用いています。

標準報酬月額等級表

上の表のように、標準報酬月額は1級から30級までの30等級に分かれていて、1,000円単位の金額になっています。また、標準賞与額は、賞与額の1,000円未満を切り捨てた額とし、標準賞与額が150万円を超えた場合は、これを150万円とします。

この等級表で決められた標準報酬月額は、原則として1年間は変更しません。したがって、毎月の報酬月額に多少の変動があっても保険料額の変動はありません。

標準報酬月額の改定

前項で標準報酬月額は原則として1年間は変わらないと言いましたが、昇給時期以外に大幅な賃金変動があったり、育児休業を終了した人などに対しては、標準報酬月額の改定を行うことがあります。標準報酬月額の決定・改定は次の4通りのときに行われます。

資格取得時決定

資格取得時(入社時)の標準報酬月額は、実際に受け取った報酬額をもとに標準報酬月額を決めるのではなく、入社時に事業主との間で定められた額や報酬支払い方法をもとにして決定します。

月、週、その他一定期間によって報酬が定められている場合、被保険者の資格を取得したときに定められた報酬の額を、その期間の総日数で割った額の30倍に相当する額を報酬月額とします。

日、時間、出来高または請負によって報酬が定められている場合、被保険者資格を取得した月全1ヶ月に現に使用される事業所において、同様の業務に従事し、かつ同様の報酬を受ける人が受けた報酬の額を平均した額を報酬月額とします。

原則の方法では算出が困難な場合、被保険者資格を取得した月前1ヶ月にその地方において同様の業務、同様の報酬を受ける人が受けた額を報酬月額とします。

標準報酬月額の有効期間
  • 1月1日から5月31日までに被保険者資格を取得した場合=その年の8月まで
  • 6月1日から12月31日までに被保険者資格を取得した場合=翌年の8月まで

定時決定

毎年7月1日現在使用される被保険者全員を対象とした標準報酬月額の改定です。ただし、次に該当する人は定時決定の対象外となります。

  • 6月1日から7月1日までに被保険者資格を取得した人
  • 7月から9月までのいずれかの月から随時改定、もしくは育児休業終了時改定が行われる人、または行われる予定の人

つまり、上記の場合は、定時決定よりも資格取得時決定、随時改定、育児休業終了時改定が優先されるということです。定時決定では標準報酬月額の変更がないかもしれませんが、随時改定、育児休業終了時改定は必ず標準報酬月額の改定が行われるため、該当する期間に定時決定を行うと標準報酬月額が競合してしまうからです。

報酬月額の算定ルール

4月、5月、6月に受けた報酬の総額をその期間の月数で割った額を報酬月額とします。なぜ「3」で割らないかというと、次の規定があるからです。

4月、5月、6月のうち、報酬支払基礎日数が17日未満の月があるときはその月を除いて報酬月額の算出を行います。月給制の人は関係ありませんが、日、時間等で報酬月額が決められている場合、仕事の繁閑で1ヶ月間フルに勤務しないときもあるからです。したがって、そういう月は他の月に比べて極端に報酬が低いので、計算には入れません。

また、報酬の締めと支払の時期は当然ずれていますから、締めの期間が毎月1日から末日と決められた事業所では3月分の報酬は4月15日などのように翌月支払が一般的だと思いますが、ここでの4月、5月、6月で受けた報酬とは実際に支払われた時期をいいます。4月に受け取った報酬が3月分であろうと4月分であろうと関係ありません。上記計算方法によって算出された報酬月額を、標準報酬月額等級表に照らしてその人の標準報酬月額を決定します。

しかし、どうしても上記条件で算定できない場合もあります。4月、5月、6月とも報酬支払基礎日数が17日未満であった、4月、5月、6月のいずれかの月においてストライキがあって賃金カットが行われた、3月以前の給料遅配分を受けたり、遡った昇給の差額分を一括して受けた等の場合は、保険者が報酬月額を算定します。

報酬月額の算定特例

会社の都合で一時帰休していて、会社から休業手当を支給されている場合、当然通常に勤務していればもらえるはずの報酬より低くなります。定時決定の時期に休業手当が支払われていたときは、休業手当をもって報酬月額として標準報酬月額を決定します。

ただし、定時決定の時期に一時帰休が解消されていれば、定時決定を行う年の9月以降に受けるであろう報酬を報酬月額として、標準報酬月額とします。

標準報酬月額の有効期間は原則1年間

定時決定された標準報酬月額の有効期間は、その年の9月から翌年の8月までです。ただし、その間に随時改定や育児休業終了時改定が行われた場合は、その改定月の前月までを有効期間とします。

随時改定

随時改定

標準報酬月額は原則として定時決定で1年間据え置かれますが、途中で賃金体系やベースとなる固定的賃金の変動により、大幅な報酬の変動があったときに実態に即するため標準報酬月額を改定することがあります。これを随時改定といいます。

次の要件にすべて該当し、保険者が認めたときに随時改定が行われます。

  1. 固定的賃金の変動または賃金体系の変更があった
    ※単に残業代が増えただけでは随時改定の対象とはなりません。
  2. 変動月以降連続した3ヶ月間のいずれの月も報酬支払基礎日数が17日以上ある
    ※連続した3ヶ月のうち1月でも報酬支払基礎日数が17日未満であれば、随時改定は行いません。
  3. 3ヶ月間の報酬の平均がそれまでの報酬月額と比べて著しく高低(原則として2級以上の差)を生じた
    ※固定的賃金に大幅な変動があっても、非固定的賃金の大幅な変動で従前の報酬月額と変わらない場合(2等級以上の差を生じない場合)は、随時改定は行われません。ただし、2級から1級または1級から2級、29級から30級または30級から29級に変動した場合は改定が行われます。
標準報酬月額の有効期間
  • 1月から6月までの間に随時改定される場合・・・その年の8月まで
  • 7月から12月までの間に随時改定される場合・・・翌年の8月まで
報酬月額の算定特例

会社の都合で一時帰休していて、会社から休業手当を支給されている場合、当然通常に勤務していればもらえるはずの報酬より低くなります。休業手当が支払われる状態が3ヶ月を超える場合、固定的賃金の変更とみなして随時改定を行います。ただし、一時帰休が解消された場合も、随時改定を行います。

育児休業等終了時改定

3歳未満の子を養育する被保険者が育児休業を終了して職場復帰するときに、休業を始める前の報酬より低い報酬となる場合があります。随時改定は原則として、2等級以上標準報酬月額が変動しないと行われませんが、育児休業の終了日に3歳未満の子を養育している被保険者が一定の要件を満たせば、2等級以上の変動がなくても標準報酬月額の改定を行うことができます。

この改定は、育児休業等を終了した3歳未満の子を養育する被保険者が、使用される事業所の事業主を経由して保険者に申し出たとき行われます。

報酬月額の算定
育児休業等終了時改定

育児休業等終了日の翌日が属する月以後3ヶ月間(その事業所に継続して使用された期間であること)に受けた報酬の総額をその月数で割った額を報酬月額とします。ただし、報酬支払基礎日数が17日未満の月は計算から除きます。

改定の時期

育児休業等終了日の翌日から起算して2ヶ月を経過した日が属する月の翌月から標準報酬月額を改定します。

標準報酬月額の有効期間
  • 1月から6月までの間に随時改定される場合・・・その年の8月まで
  • 7月から12月までの間に随時改定される場合・・・翌年の8月まで
サブコンテンツ

FX人気商品

このページの先頭へ