合意分割

熟年離婚の増加により、厚生年金保険の標準報酬を分割できる合意分割の制度が平成19年4月からスタートしました。さらに、平成20年4月からは第3号被保険者期間についての標準報酬の分割制度が始まりました。ここでは、なにが分割されるのか、分割の按分はどうするのか、分割したらなにが変わるのかなどを中心に紹介します。

合意分割の概要

合意分割イメージ

婚姻期間中の夫婦各々の標準報酬について、決められた按分割合(分割比率)で標準報酬の多い者から少ない者へ分割された標準報酬を渡します。つまり、受給する年金額を分割するのではなく、年金額を決定する要素の一つである標準報酬(標準報酬月額、標準賞与額)を分割します。

分割の割合は当事者同士で決めるのが原則ですが、家庭裁判所が決めることもできます。分割できる標準報酬は標準報酬の差額の0%~50%までとなっています。つまり、ある月の標準報酬月額が40万円と20万円である場合、差額の20万円を最大で50%(10万円)まで分割できるということです。

標準報酬改定請求の流れ

  1. 標準報酬改定請求に必要な情報を請求し、標準報酬(月額)の記録の合計を比較します。
    • 社会保険庁長官に情報の提供を請求する。
    • 再評価後の標準報酬の記録を比較して、多い者(第1号改定者)から少ない者(第2号改定者)に分割する。
  2. 按分割合を決め、標準報酬改定請求を行います。
    • 当事者の合意に基づき按分割合を決める。
    • 協議が調わないとき、協議ができないときは当事者の一方の申立により、家庭裁判所が按分割合を決めることができる。
    • 按分割合には上限と下限がある。
    • 按分の上限は標準報酬月額(標準賞与額)の合計額の2分の1
    • 按分の下限は第2号改定者の分割前の持ち分
  3. 按分割合に応じて第1号改定者と第2号改定者の標準報酬(月額)を改定します。
    • 遡って受給権が発生したり、額が改定されることはない。
    • 老齢厚生年金の受給権者等は改定請求のあった月の翌月から年金額を改定する。

離婚等をしたときから2年を経過したときは改定請求できません。

離婚以外に合意分割の対象となるもの

離婚の他に次の場合も離婚分割の対象となります。

  • 婚姻の取消(重婚、待婚等の取消)
  • 事実婚の解消(ただし、被扶養配偶者として国民年金の第3号被保険者期間がある場合のみ)

合意分割されるとどうなる?

第1号改定者の被保険者期間であって第2号改定者の被保険者期間でない期間は、第2号改定者の被保険者期間であったとみなされます。したがって、第2号改定者の厚生年金被保険者期間が増えることがあります。
年金等の計算に反映されるのは次の通りです。

  • 厚生年金報酬比例部分の計算
  • 遺族厚生年金支給要件をみるときの被保険者期間

したがって、厚生年金定額部分、老齢厚生年金(老齢基礎年金)の受給資格期間、特別支給の老齢厚生年金の支給要件となる被保険者期間、長期加入者の特例、加給年金額の支給要件となる被保険者期間の月数、脱退一時金の要件である被保険者期間には算入されません。

老齢厚生年金の受給権者である第1号改定者に65歳未満の第2号改定者がいる場合は、第1号改定者の厚生年金被保険者期間の月数が240月以上であるときに加給年金が加算され、第2号改定者が65歳になった時点で老齢基礎年金に振替加算が行われます。

しかし、振替加算は第2号改定者の要件として、厚生年金被保険者期間240月未満でなければならないとされていますから、合意分割によりみなし被保険者も含めて厚生年金被保険者期間が240月以上となった場合は、振替加算はなくなります。

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