障害基礎年金の支給停止と失権
障害は自然に程度が良くなったり悪くなったりすることがあります。悪くなった場合は年金額が改定されることもありますが、逆に良くなった場合は障害等級に該当しなくなれば年金の支給は停止されます。ここで注意したいのは、年金の受給権がなくなる「失権」と「支給停止」は違うということです。失権は同一事由では二度と年金の支給は再開されませんが、支給停止は再度年金を支給する要件を満たせば、受給できるということです。
また、障害の軽減による支給停止だけでなく、他の制度とのかねあいで、他の制度を優先する間支給を停止する場合もあります。
労働基準法の障害補償による障害基礎年金の支給停止
障害基礎年金の支給事由となる障害の原因は、原則として業務上(仕事中)、業務外(私傷病)を問いません。ところが、業務上の傷病で障害が残った場合、労働基準法による障害補償が適用される場合があります。このときは、両方の制度から補償されるのではなく、労働基準法の障害補償が優先されます。これが適用されますと、6年間障害基礎年金は支給停止されます。労働基準法では、使用者が行う障害補償について実際上6年分割まで認めているからです。
障害の程度による障害基礎年金の支給停止
障害基礎年金の受給権者障害の程度が障害等級に該当しなくなったときは、その該当しない間、障害基礎年金の支給は停止されます。
当然、その障害が自然悪化して障害等級に該当したり、別の障害が発生し、支給停止されている障害と併合して障害等級に該当すれば、支給停止は解除されて再開されます。
20歳前傷病による障害基礎年金の支給停止
20歳前傷病による障害基礎年金の支給停止は、上記事由の他、次のいずれかに該当する場合にも行われます。20歳前傷病による障害基礎年金は、税金や他の被保険者からの保険料で年金支給が賄われるため、条件が厳しくなっているからです。
- 恩給法に基づく年金給付、労働者災害補償保険法(労災法)の規定による年金給付などを受けることができるとき(例外規定あり)
- 監獄、労役場その他これらに準ずる施設に収容されているとき
- 少年院その他これに準ずる施設に収容されているとき
- 日本国内に住所を有しないとき
- 所得による支給停止(受給権者本人の前年所得が、その人の所得税法に規定する控除対象配偶者および扶養親族の有無および数に応じて、政令で定める額を超えるときは、その年の8月から翌年の7月まで政令で定めるところによりその全部または2分の1(子の加算があるときはその額を控除した額の2分の1)に相当する部分が支給停止される。)
障害基礎年金の失権
障害基礎年金の受給権は次のいずれかに該当した場合に消滅します。
- 受給権者が死亡したとき
- 障害厚生年金の障害等級(1,2,3級)に該当する程度の状態にない人が、65歳に達したとき(図の上)ただし、65歳に達した日に障害等級3級に該当しなくなってから3年を経過していないときを除く
- 障害厚生年金の障害等級(1,2,3級)に該当する程度の状態にない人が、3年を経過したとき(図の下)ただし、3年を経過した日に65歳未満であるときを除く
- 併合認定により、前後の障害を併合した障害の程度による障害基礎年金の受給権を取得した場合、従前の障害基礎年金の受給権は消滅する。
ただし、旧法の障害年金を受給していた場合は併合認定が行われ、従前の旧法による障害年金の受給権は消滅せず、併合認定後の新年金と従前の障害年金のどちらかを選択することになります。これは、旧法の障害年金額が新法の障害基礎年金より高額な場合があるからです。