寡婦年金
老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている夫が、老齢基礎年金を受給する前に死亡した場合、妻に対して60歳から65歳までの間に支給されるのが、国民年金独自の寡婦年金です。
遺族基礎年金の支給要件との違いを中心に説明します。
寡婦年金の支給要件
寡婦年金は死亡した夫、受給権者である妻それぞれ次の支給要件をすべて満たしたときに支給されます。
- 死亡した夫の支給要件
- 1.死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年(大正15年4月2日から昭和5年4月1日生まれの期間短縮特例が適用される人は21年~24年)以上ある夫であること(免除期間は学生納付特例、30歳未満納付特例の期間を除く)
- 2.障害基礎年金(旧国民年金法の障害福祉年金を除く)の受給権者だったことがないこと
- 3.老齢基礎年金(繰上支給の老齢基礎年金を含む)の支給を受けていないこと
- 遺族基礎年金との違い
- 1.遺族基礎年金の被保険者期間は第1号被保険者だけとは限りませんが、寡婦年金では第1号被保険者期間のみで判断されます。
- 2.死亡日の保険料納付要件で、遺族基礎年金は被保険者期間がなくても支給されることがありますが、寡婦年金では、老齢基礎年金を受給できる資格が必要です。
- 3.遺族基礎年金は、死亡した夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受給していても、一定要件を満たした子があれば支給されますが、寡婦年金は、死亡した夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受給したことがある場合は支給されません。
- 妻の支給要件
- 1.夫の死亡当時、夫によって生計を維持していたこと
- 2.夫との婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)が10年以上継続していたこと
- 3.65歳未満であること
- 遺族基礎年金との違い
- 1.妻が遺族基礎年金を受給するには、受給資格のある子と生計を同じくする必要がありましたが、寡婦年金では子があるかないかは問われていません。したがって、子のない妻も他の要件を満たしていれば寡婦年金を受給できます。
- 2.遺族基礎年金では夫婦の婚姻期間は問われませんが、寡婦年金では継続して10年以上という要件を満たさなくてはなりません。
上図の「子のある妻」の場合、遺族基礎年金の受給権を失権しても、妻が65歳未満であれば寡婦年金を受給することができます。また、遺族基礎年金の受給権が消滅する前に60歳になり、寡婦年金も受給できるときはどちらか一方を選択します。
寡婦年金の支給開始
夫の死亡時、60歳以上の妻については、夫の死亡日の属する月の翌月から支給され、60歳未満の妻については、60歳に達した日の属する月の翌月から支給されます。
寡婦年金の年金額
寡婦年金の年金額は、夫の死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間で、死亡日の前日における保険料納付済期間および保険料免除期間につき、老齢基礎年金の年金額計算方法により算出した額の4分の3に相当する額です。
上図の例で、夫の被保険者期間がすべて第1号被保険者期間で、保険料納付済期間が25年(300月)、半額免除期間が5年(平成21年4月前の60月)だとすると、寡婦年金額(平成25年度)の計算式は、
年金額=778,500円×(300月+60月×2÷3)÷480月×3÷4≒413,578円
100円未満四捨五入ですから、413,600円となります。
夫が付加年金の保険料を納付していた場合でも、付加年金の加算はありません。
寡婦年金の支給停止と失権
- 支給停止
- 寡婦年金は、労働基準法の規定による遺族補償が行われるときは、死亡日から6年間支給停止されます。
- 失権
- 1.65歳に達したとき(誕生日の前日)
- 2.死亡したとき
- 3.婚姻(事実婚も含む)したとき
- 4.養子(事実上の養子も含む)となったとき(ただし、直系血族、直系姻族の養子となった場合を除く)
- 5.繰上支給の老齢基礎年金の受給権を取得したとき
繰上げ支給の老齢基礎年金を受給することは、65歳になったとみなされるためです。